5/8/2025
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5/8/2025
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変わったトニックコードを探してみよう Python で探してみよう
概要
SoundQuest さんの記事を見ていたら、トニック/ドミナント/サブドミナントのとある理論書での定義が載っていました。
ここで、トニック/ドミナント/サブドミナントはそれぞれコードの機能を指します。
一般的には、トニックは安定、ドミナントは不安定、サブドミナントは中間的とされています。
また、ドミナント(特にドミナントセブンス)からトニックに移るコード進行は「解決感」があるとされています。
しかし IIIm の和音のように、トニックのようでもありドミナントのようでもある和音も存在します。 音楽は曖昧 であるため、トニックであるかを気にせずに IIIm を使って構わないと思います。
それはそれとして、定義付けというのは面白いものです。興味を惹かれたので、記事にしてみました。
トニック/ドミナント/サブドミナントの定義
ドミナント
- ファを有し、かつシを有する
サブドミナント
- ファを有し、しかしシは有さない
トニック
- ファを有さない
雑感
トニックの定義には驚きました。ファがない限り、すべてトニックだというのです。
驚きましたが納得できる面もあります。まず IIIm はトニックに確定します。そして、ダブル・ドミナントとして使われていない場合の II7 は、確かにトニック的に使われることが多いと感じます。
例えばスピッツの曲にありそうな、 F G Am D7 F G C という進行ですが、この場合の D7 をトニックとも解釈できるのは便利だと思います。
ただし、この定義は一部のジャズ系理論書でのものであり、コンセンサスがあるわけではないようです。
応用
この定義を使えば、 II7 のような隠れトニックを探すことができます。
例えば C (ドミソ) はトニック、Dm (レファソ)はファがあるためサブドミナントです。エクセル(スプレッドシート)を使えば便利に探すことができます。
ここでは総当たりで探してみようと思い、エクセルやスプレッドシートではなく、Python で実装してみました。
Github にコードをアップしていますので、興味があればご覧ください。
ここではコードを分ける基準と、結果のみを書こうと思います。
ちなみに、全部キーは C メジャーを前提としています。
コードを分ける基準
こんなふうに書きました。
if (
"F" in Chord(current_chord).components()
and "B" in Chord(current_chord).components()
):
print("Dominant")
elif (
"F" in Chord(current_chord).components()
and "Ab" in Chord(current_chord).components()
):
print("Subdominant-Minor")
elif "F" in Chord(current_chord).components():
print("Subdominant")
else:
print("Tonic")
tmp_tonic_list.append(current_chord)
Chord(current_chord).components() は和音の構成音を返す関数です。何度も書くはめになったので、本当は変数にすべきだったと思います。current_chord にはいろんな和音が入ってきます。
if で条件分岐しています。
- "F" と "B" がある場合はドミナント
- "F" と "Ab" がある場合はサブドミナントマイナー
- "F" がある場合はサブドミナント
- それ以外はトニック(tonic_list に追加)
さてどうなるか?
結果
Tonic List
[['C', 'Cm', 'Cmaj7', 'C7', 'Cm7', 'Csus2', 'Caug', 'Cdim', 'Cdim7', 'Cm7b5'],
['Dbm', 'Dbm7', 'Dbsus4', 'Dbsus2', 'Dbdim', 'Dbdim7', 'Dbm7b5'],
['D', 'Dmaj7', 'D7', 'Dsus4', 'Dsus2', 'Daug'],
['Eb',
'Ebm',
'Ebmaj7',
'Eb7',
'Ebm7',
'Ebsus4',
'Ebaug',
'Ebdim',
'Ebdim7',
'Ebm7b5'],
['E',
'Em',
'Emaj7',
'E7',
'Em7',
'Esus4',
'Esus2',
'Eaug',
'Edim',
'Edim7',
'Em7b5'],
[],
['Gb',
'Gbm',
'Gb7',
'Gbm7',
'Gbsus4',
'Gbsus2',
'Gbaug',
'Gbdim',
'Gbdim7',
'Gbm7b5'],
['G', 'Gm', 'Gmaj7', 'Gsus4', 'Gsus2', 'Gaug', 'Gdim', 'Gdim7'],
['Ab',
'Abm',
'Abmaj7',
'Ab7',
'Abm7',
'Absus4',
'Absus2',
'Abaug',
'Abdim',
'Abm7b5'],
['A', 'Am', 'Amaj7', 'A7', 'Am7', 'Asus4', 'Asus2', 'Adim', 'Adim7', 'Am7b5'],
['Bbaug', 'Bbdim', 'Bbdim7', 'Bbm7b5'],
['B', 'Bm', 'Bmaj7', 'B7', 'Bm7', 'Bsus4', 'Bsus2', 'Baug']]
非常にたくさんのコードがトニックらしさを持つことが判明しました。
トニックリストのうち、特に興味深いもの
D7
さきほども挙げた D7 ですが、G7 に進むダブル・ドミナントとして使われる以外は、トニックとして解釈可能なようです。
Dm がファを有するので勘違いしそうになりますが、D ファミリー自体はサブドミナント的であるわけではないということのようです。
よく F に進むのも、トニックとして解釈可能な状況証拠ですね。
Gm
Gm トニックなん?
まあ、Gm は C をベースにして Gm7onC の形を作ることがあるので、C との相性も良いのかもしれません。
B7
B7 が出てきたのは感慨深いです。
The Beatles の Sexy Sadie という曲で、 G F#7 C D というコード進行があるからです。
C における B7 は、G に移調すると F#7 になります。Sexy Sadie のコード進行を C に移調すると C B7 F G となります。
B7 から F というかなり面白いコード進行ですが、B7 がトニックなら理解可能です。
G
G はさすがにドミナントやろ? と思いますが定義上ファを含んでいないのでトニックとして解釈されています。
アイルランド風だったりすると G でもドミナントのえぐみが無かったりするので、そういう部分が反映されているのかもしれません。
F 系全滅
F の時点でファを含むので全滅してしまいました。
個人的には、ベースにファを使いハーモニーにファを含まない事が多い Fmaj7 あたりはトニックでも良い気がしましたが、定義上はダメですね。
まとめ
トニックの定義を知ったことから、総当たりでトニックコードを探してみました。
個人的には、D7 や B7 がトニックとして解釈されることが面白かったです。The Beatles の Sexy Sadie の謎が少し解けました。
注意: この記事では C メジャーであることが前提です。D7 がキー G メジャーのダブル・ドミナントとしても解釈できるように、一時転調が入ると話が変わると思います。
#作曲 #音楽理論
5/8/2025
Song
夕日が西に沈む 木々の葉が目も綾な模様 織りなす布は タペストリー 誰も欠かせない 役者たち (Ah Yeah) 僕らは大きな意図で 期せずしてモアレを描く 君の気付かないうちに 夕日は西に沈んだ 木々の葉は見えなくなった 街の灯りが 点いてく 複雑なパターンを描いてる (Oh My) 僕らは大きな意図で 期せずしてモアレを描く 君の気付かないうちに
5/8/2025
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5/8/2025
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5/7/2025
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5/7/2025
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5/6/2025
Song
親愛なるカーティス そちらはどうですか? こちらは相変わらず 争いと 嘲りばかり 生きることは苦しくて 思わず他人を 許せなくなってしまう 悪者は 誰だろう いつかあなたの優しい声が 春の野のようにみんなを包む そんなときが 親愛なるカーティス 残念なことに まだあなたの言葉が 僕らには 必要です いつかあなたの優しい声が 春の野のようにみんなを包む そんなときが 親愛なるカーティス ここらで失礼 僕らにはこの世にも やることが 残っています
5/3/2025
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5/3/2025
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90 年代のジョニを聴こう
概要
#ジョニ・ミッチェル の 90 年代のアルバムを聴いています。
ジョニの全盛期といえば 70 年代だと思われます。Ladies of the Canyon を皮切りに、Blue や Court and Spark, Hejira などタイトルだけで強すぎる名盤が続きます。
しかしながら 90 年代のアルバムも捨てがたい。70 年代のソプラノ・ボイスからアルト気味に歌い方が変わっているのですが、それに象徴されるように、深みと円熟味を増しているように思います。
ジョニが 90 年代にリリースした(オリジナル・フルレンス)アルバムは以下の 3 枚です。
- Night Ride Home (1991)
- Turbulent Indigo (1994)
- Taming the Tiger (1998)
また、96 年には 2 枚セットのベストアルバムもリリースされています
- Hits (1996)
- Misses (1996)
この記事では 3 枚のオリジナルアルバムを中心に、90 年代のジョニを振り返ります。
90 年代の音楽シーンを振り返る
音楽シーンを振り返ったときに、一般的に 90 年代はグランジ、オルタナ、ブリットポップ、シューゲイザーなどのキーワードで語られます。80 年代にちょっと鳴りを潜めていたロック系の音楽が復活した時代です。
ついでにいえば、ヒップホップも強かったです。A Tribe Called Quest や Notorious B.I.G. など、ビッグネームが活躍していた時代です。が、ジョニにはあまり関係ないですね……。
90 年代はアクの強かった 80 年代の反省からか、やや 70 年代に回帰する流れがあったように思います。ニール・ヤングは Harvest Moon を出しましたし、ボブ・ディランは Time Out of Mind を出しました。ヴァン・モリソンは Days Like This や The Healing Game など好調を維持していましたし、ポール・サイモンは The Rhythm of the Saints という個人的に好きなアルバムを出しています。彼らのような、60 ~ 70 年代のスターが再び輝きを放ち始めていました。
女性シンガー・ソングライター・シーンが盛り上がっていたのも 90 年代の特徴です。アラニス・モリセットやフィオナ・アップル、シェリル・クロウ、エイミー・マンなどがデビューしました。ビョークも Debut というタイトルのアルバムを出しました。
これらの流れは緩やかにジョニにも影響を与えたのではないかと思います。時代のせいなのかたまたまなのか、ジョニもまた 90 年代に入って輝きを増しました。ただし、70 年代のスタイルとはけっこう変わっています。
90 年代ジョニのスタイルの変化
90 年代のジョニのスタイルは、バンド全体トータルのアレンジを洗練させているように思います。60 年代後半~ 70 年代前半のジョニはしばしば弾き語りスタイルでした。ジャズ系のアーティストを多数起用した Court and Spark や、ジャコ・パストリアスとのコラボレーションが含まれた Hejira など、バンド然としたアルバムもあるのですが、明らかにフロントマン(ウーマン)のジョニが目立っていました。
それに比べると 90 年代では、バンドがアンサンブルしているように思います。また、プリンス(80 年代の重要人物)がジョニ好きなのは有名ですが、逆にジョニもプリンスの影響を受けているように思います。ギターを弾ききらず、敷き詰めずに、必要な部分だけに音を置いていくアレンジが目立ちます。
シンセサイザーが多用されているのも 90 年代ジョニの特徴です。主にベースとしての役割や、パッドとしての役割を果たしていますが、パッドにしては妙に音がでかいのが特徴です。ジョニには 70 年代の Hissing of Summer Lawns などのように、シンセサイザーを使ったアルバムもありますが、90 年代のそれはより強い印象を持ちます。
そしてボーカルスタイルの変化。先にも書きましたが、ソプラノからアルトに声域が変わっています。たぶんそのためだと思いますが、もともとはっきりした起承転結が無いメロディを書くジョニが、さらにとらえどころが無くなっています。良い面と悪い面がありますが……。
各アルバムから代表曲紹介
各アルバムからおすすめの曲を紹介します。
Night Ride Home (1991)
自分が 90 年代ジョニを見直したきっかけになった作品です。全体的に爽やかな空気が流れていると思います。
Night Ride Home
ジョニといえば移動しているときの歌が多いですが、これもその中の一つです。メロディも爽やかで比較的分かりやすい。
虫の声の SE が入っているのが特徴的。よく、虫の声は日本人以外にはノイズに聞こえると言いますが、その割にはけっこう虫の声を使った曲が多いように思います。XTC とか。
Nothing Can Be Done
妙な中毒性がある曲です。ジョニとしては珍しく(?)分かりやすいリフがあります。サビの「Oh Nothing Can Be Done」の「Oh」が好きで、一緒に歌いたくなります。
Turbulent Indigo (1994)
アグレッシブな音使いが聞けるアルバムです。シンセサイザーの使用が多いのも特徴。あと歌詞が強い。
Sex Kills
前に停まった車のカーナンバーが"Just Ice"だったのを見て、"Is Justice Just Ice?"という疑問を抱く。そして"Sex Sells Everything, Sex Kills..." という歌詞のシチュエーションが凄まじい曲です。
実はプリンスに影響を受けている曲なのではないかと思います。音色は違うけれど、リズムのパターンが似ている気が。
The Magdalene Laundries
マグダレン洗濯所とは、「堕落した」女性を収容していたとされるカトリックの施設のことです。歌詞ではレッテルを貼られ、辱めを受けた女性たちの姿を情感を込めて描写しています。
シンプルなエレキギター弾き語りに加え、パッド的な(そしてパッドにしては音がでかい)シンセサイザーが入っています。70 年代ジョニの延長線上でありながら、さらに進化したような曲です。
Taming the Tiger (1998)
プリンス的なというか、スライ・アンド・ファミリーストーン的なというか、一つの楽器を敷き詰めず、複数の楽器を使って音を置いていくアレンジがさらに一歩進んだアルバムです。
一方で、同じような印象の曲が多いアルバムでもあります。
Man from Mars
一瞬デヴィッド・ボウイかと思ってしまったけど関係ないです。ジョニに多い、失恋後に相手の不在を噛みしめるような曲です。
I call and call The Silence is so full of sounds You're in them all I hear you in the water
という歌詞が悲しくてとても素敵です。
The Crazy Cries of Love
こちらも恋愛がらみだけど、心温まる内容。
In the back booth of an all night cafe Two dripping raincoats are hanging
レインコートがかけられているだけなのに、なぜか二人の笑顔が見えるようなくすぐったさを刺激される歌詞です。
そういえばこのアルバムはジャケットが直筆(と思われる)の自画像なのですが、他の自画像に比べ明るい印象です。それがこの曲には似合います。
まとめ
90 年代のジョニも素晴らしいです。次は 80 年代を聴き込んでいきたいと思います。